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【インタビュー】井筒香奈江 その表現と音楽、音へのこだわり page 5/5

アーティストにとってのハイレゾ音源

炭山 その「まにまにIII」の「ひこうき雲」では、ピアノの前奏が始まって、そのメカ音がゴトンと鳴り、それから20秒ほど過ぎたところで、カチっと音がする。30秒ごとに時計の分針が動く音なのですが、このカチっという音がハイレゾだと、わかりやすいところが面白いです。

井筒 ハイレゾは、ある面、怖いですね。録音場所は、立川にある市民ホールのようなところだったのですが、私たちも気づいていて、録音のとき時計を外そうとしました。しかし、どうしてもそれができなくて諦めたのです。ハイレゾではそうした周辺の要素まで含めてひとつの演奏空間として、よりリアルに感じていただけるのではないかと思います。

炭山 最初からマスターは96kHz/24bitで録音されていたわけで、それがハイレゾで発売されたなと思ったらすごいことになりました。e-onkyo musicの人気ランキングでも、チックコリアと並んだり、カラヤンと並んだり、カーペンターズと並んだりしましたからね。

井筒 ハイレゾでリリースしたのは、川瀬さんの仕事がきちんと伝わると考えたからなのです。CDでは、エンジニアの川瀬さんが行った仕事の力量というものが100%、そのままCDに入るとは限りません。それでも良い場合もあるし、聴いてくださる方の中にはCDの音が好きだという方たちもいらっしゃいます。だからCDがわるいという意味ではありません。ただ精一杯の力と愛情を込めて1曲、1曲を作り上げていった川瀬さんの仕事の凄さが、ハイレゾではCD以上に伝えてくれるということでした。リスナーの方にハイレゾで聴いていただいて、これだけの仕事をやっています、ということを伝えたかったのです。

炭山 CDの44.1kHz/16bitと比べると、96kHz/24bitは約500倍の器の大きさになります。マスターが96kHz/24bitで収録されているので、CDの器では収めきれていなかった情報、込めきれなかった情熱というのがあるのだということが、聴き比べるとはっきりするように感じます。

井筒 ハイレゾの音はすごくクリアーで、スッと音がこっちに向かってきてくれます。制作段階では、そのスッと音がこちらに来るように、という音作りをしているので、それがそのまま出て来るのはいいですね。

炭山 もちろん、CDだけを聴いていても、決して不満を感じることはありません。CDもきちんと作られているからですが、ハイレゾを聴くと、また印象が変わってきます。CDのフォーマット的な制約がなくなって、より一段と目の前が開けた、磨りガラス一枚を外したような美しさ、自然さ、素直さとなります。ハイレゾは、井筒香奈江の仕事、川瀬真司の仕事に非常にふさわしい器なのだと思います。CDを持っている方も、ぜひ、ハイレゾで聴き比べていただきたいですね。

井筒 おっしゃっていただいたように、きっと音楽の表情が変わってくると思います。それこそ同じ曲でも、人格が変わるくらいに感じられるものもあるかもしれません。当初、私もハイレゾについて、それほど詳しくなかったのですが、e-onkyo musicでハイレゾ音源でリリースしたとき、あ、こんなに違うのかということが初めてわかりました。ほんとに表現や音が、ストレートに抜けてくる印象です。録音では、より歌に集中できるように、実際の音を聴きながら、いくつものマイクとモニターヘッドフォンの組み合わせから、自分にスッと耳あたりよく聴こえてくるときの音と同じようになるものを選ぶのですが、ハイレゾはそれにすごく近い。スタジオで歌っているときの感じ、リアルタイムでモニターで聴く感じに近いのですね。

インタビュー後記

炭山アキラ

 井筒香奈江の歌の世界に初めて触れたのは、今からもう10年ほども前のことだったろうか。レイドバックの2ndアルバム「リフレイム」が初体験だった。とあるイベントでお会いしたソウルノート/ファンダメンタル・ブランドの鈴木哲代表が自社システムでかけていらして、あまりの素直な声の表現に「このソフト、何ですか!」と伺うと、「よかったら持って帰って宣伝して下さい」と1枚頂いてしまった。以来、『オーディオベーシック』誌の連載「高音質ディスク聴きまくり」をはじめ、いろんな機会でいいぞ、いいぞと触れ回っていたら、それがご縁で井筒さんご本人にも面識を得、以来ほとんど友達付き合いのようにさせてもらっている。アーティストとしては本当に腰が低く、友人を尊重してくれる人である。

井筒さんとは何度も会っていろいろな話を伺ってはいたのだが、今回改めて取材というフォーマルな場でいろいろな話を聞けたのは私自身にとっても収穫だった。特に偶然オーディオ業界で注目され、知名度は上がったけれども「音質」メインで語られるようになった歌姫の苦悩は、ある程度の推測はついていたものの、その深さにこちらも申し訳ないやら責任を感じるやら。しかしその結果、あの傑作『時のまにまにII 春夏秋冬』が生まれたとするならば、その苦悩も無駄ではなかったと思う。歌の情感を時にオリジナルの歌手よりもあからさまにする井筒香奈江の歌唱は、もっともっと多くの人にその魅力を味わってほしいと切に願う。


■ハイレゾで聴ける井筒香奈江の作品④
『時のまにまにⅣ ~時代~』
Vocal 井筒香奈江
Piano 藤澤由二
Eectric bass 小川浩史
Recorded Engineer 川瀬真司(Gumbo Studio)

<収録曲>01. 時代/02. オリビアを聴きながら/03. ガラス越しに消えた夏/04. 想い出のスクリーン/05. かもめはかもめ/06. 主人公/07. ラストワルツ

WAV・FLAC 96kHz/24bit

 

 

 

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