驚異のモニター FitEar MH334 カスタムメイド体験記~音楽だけが鳴る静寂世界の新体験~
それは、どこでも音楽を思う存分に楽しめる秘密兵器だ
文・金城 稔(「PCオーディオfan」「Auido Basic」編集長)
本当に驚きの体験だった。そこは都心にしては静かなビルの一室だったが、FitEarのイヤーモニターを装着した瞬間、あたりが突然より深い静寂に包まれたのだ。一瞬、かつて陽光きらめく南の島のエメラルドグリーンの海に身体を沈めたときの感覚を思い出し、呼吸をするのを躊躇したほどだった。
私は、その日、須山補聴器銀座店の5階にいた。使う人の耳型に合わせて製作するカスタムオーダーメイドのインナーイヤー型ヘッドフォン、FitEarのカスタムイヤーモニターMH334が出来上がったとの連絡を受け、装着感の確認に訪れていたのだ。初めて体験するカスタムイヤーモニターの世界は、予想をはるかに超えていた。
自分の耳穴にぴったりということがどういうことなのか、それはもう体験していただかないとわかっていただけないだろう。帰りの地下鉄でブラッド・メルドーを聴いても、周りの音がまったく気にならず音楽に集中できる遮音性、電車が停車中にかなりの音量でレディー・ガガを聴いても隣の人に気づかれない音漏れの無さ、多少激しく動いてもケーブルにさわっても耳からイヤーフォンがずれない装着性。どれも既成品のインナーイヤー型では得られないカスタムメイドならではの耳穴とのフィット性ゆえだ。
耳型の採取から始まる製作はまさにオーダーメイド

耳型採取のプロセス。型を取るシリコンを鼓膜の手前でストップさせるため、慎重に耳の穴にひも付きのスポンジを挿入していく(上)。型をとるためのシリコンフォームを注射器のようなもので耳に注入していく(中)。出来上がった型。耳穴が複雑な形状をしていることがわかる(下)。
さかのぼること約2週間前、やはり私はこの須山補聴器銀座店にいた。カスタムイヤーモニターを作ることになったら、事前に耳型を製作しなければならないからだ。最初に、病院で手術を受ける際に書くような同意書にサインすることを求められ、ちょっとドキドキする。身体に装着するものを作成するわけだから、耳の状態に問題がないということを確認する必要があるのだ。
そのあと、いよいよ耳型採取の作業に取りかかる。まずは、店長で認定補聴器技能者の資格を持つ上岡さんが、慎重に耳の穴にひも付きのスポンジを挿入していく。鼓膜の手前で型を取るシリコンをストップさせるためだ。次に型をとるためのシリコンフォームを注射器のようなもので耳に注入していく。シリコンフォームを注入する際の圧力により若干耳穴が押し拡げられるため、採取する耳型が変形しないよう、注入後に口を開き、アゴの関節を左右に動かして圧力を緩和させる。
反対側の耳も同様の作業を行って約5分後、形が崩れない程度に硬化したシリコンを耳から引っ張り出し、耳型の採取が終了する。その耳型を元に、カスタムシェルを設計、そこにドライバーユニットを組み込むのだ。そして、表面の形を整え、コーティングを施し、名前を入れて完成となる。完成まで10日間前後かかるが、出来上がるのを待つのもまた楽しい時間である。
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